ドラえもんの「ジャイアン」、「ジャイ子」の名前に関する説は、実に様々。なかでもよく目にするのが、「ジャイアン=ジャイ子のアンちゃん」説。

つまり、名前が出来たのはジャイ子が先だと。

だが私はそれに異を唱える。

コミックス21巻、「未来の町にただ一人」で、のび太は孫のセワシの住む未来へと行くのですが、その時出てきた、セワシの友人のジャイアンそっくりの男の子の名は「ジャンボ」。

ここから、「ジャイアン」の名も、この「ジャンボ」同様、「大きい」という意味の「ジャイアント」からとったものだと推測されるのです。

ジャイアンの妹だから、「ジャイ子」なのだと。

ちなみに、ジャイ子は本名ではないと、生前の藤子氏自身がおっしゃっていたという説があります。いずれ本編で語られるはずであったとのことですが、その前に惜しくもお亡くなりになってしまい、いまや真相は藪の中ですが・・・・・・。
てんとう虫コミックス26巻収録。

この作品がどうして文庫の「感動編」に収録されていないのか、非常に不思議。「ドラえもん」の中でも5本の指に入るくらいの、大好きな作品です。

ストーリーはのび太が裏山にいるシーンから始まります。辛いことがあった時、ここにくると慰められる、だからゴミが捨ててあると腹が立つと言って、山に捨てられたゴミを片付けるのび太。その姿に感心したドラえもんは、山と心を通い合わせることの出来る道具を出す。

のび太は山を愛し、また山も、ジャイアン達を追い払ったり、草のベッドを作ったり、木の実を生らすなどして、惜しみない愛情を彼に注ぐ。普段いじめられっ子で劣等性の彼は、裏山という居心地のいい安息の場所を手に入れて、友達とも遊ばず、家にも帰らずそこに閉じこもるようになり、社会から完全に逃避してしまう。

それに危機感を抱いたドラえもんは、山の心を呼び出して、なんとかのび太を返してくれるように土下座までして説得するが、のび太を愛する山は聞く耳を持たない。

いつもは何だかんだ言いつつものび太には甘いドラえもんも、今度ばかりは違った。「ここにいれば誰にもいじめられないし、食べ物も山が出してくれるんだよ!!」と言うのび太と、「食べて生きてるだけでいいのか!!こんなこと続けてたら、君はだめになっちゃう!!必ずだめになるぞ!!」と激しく口論する。

その様子を見て、動揺する山。

「山よ、こいつを追っ払え!」
のび太のセリフに山は応えた。だがしかし、落とし穴に落とされ、蜂に追いかけられて、追い払われたのはのび太自身。

それを見たドラえもんは、振り返って呟く。

「ありがとう・・・・・・。君、本当にのび太が好きだったんだね」

裏山とドラえもんと。二人がどれほどのび太を愛しているか、また、のび太がこれほどまでに二人に愛される人間であるということが窺い知れる名作です。
言わずと知れた、藤子・F・不二雄氏の大人気コミック。てんとう虫コミックスは45巻まで発売。誰しも一度は読んだことがあるのではないでしょうか。

私はあえて、子どもではなく大人にこそ薦めたいマンガです。

私は「ドラえもん」が文庫化された時に、もう一度読んでみようかと手に取ったのですが、子どもの時に味わったものとは別の、大人になったからこそわかる感動というものに大きな衝撃を受けました。それ以来、すっかり氏の虜になって、作品を読み漁っております。

どうもまだ、「ドラえもん」は子どもの読み物だと思ってらっしゃる方が多い。好きなマンガはと尋ねられ、「ドラえもん」と答えると、大概鼻で笑われます。読んでくだされば、すぐにわかると思うのですが。

現に、現在発売になっている雑誌、「ぼく、ドラえもん」の主な購買層は"大人"です。スーツを着たサラリーマンのおじさん、お兄さん達が、お昼の休憩時間中、書店で「大長編ドラえもん」なんかをじっと立ち読みしてる姿を見ると、本当に嬉しくて笑顔がこぼれてしまいます。

普段大人として一生懸命働き続けている彼らも、「ドラえもん」には夢中になっちゃうんだなあ、と。

ここでは、大人に読んでほしい「ドラえもん」の名作を、私が勝手にセレクトしてご紹介していきたいと思います。

これを読んで、「ドラえもん」を再び手に取る方々が増えることを祈って。