最初読み初めた時は、「? なんかよくわからないかも」という印象だった。しかし、読み進めていく内に、途中で止められなくなり、「田辺のつる」で度肝を抜かれ、「午前10:00の家鴨」でひっくり返り、「うしろあたま」で完全にさらわれてしまった。

私は一種のアレルギーと思えるほど「恋愛マンガ」を苦手としているため、女性作家で好きな人はほとんどいませんでしたが、久々にハマってしまったようです。

表題作の「絶対安全剃刀」。

自殺しようとする少年と、その友人の話が、何とも明るく軽快に描かれている。
「田辺のつる」同様、作者は「痴呆」や「自殺」などといった重いテーマを軽妙に見せる。そしてその明るさが、かえって恐怖を誘い出しているようにも見える。

自殺しようとする少年は、ちょっとしたはずみで、誤って友人を殺してしまう。しかし、少年は驚きも悲しみもしない。
むしろ、自分より先に死んでしまった友人に「僕の役を横取りするなんて」とののしる。

そして最後、その友人の遺体に向かって、
「おいおまえねー、あしたの朝にはおきろよね」
と呟くのである。

私はこの作品を読んで、最近起こった恐ろしい少年犯罪を思い出した。
「死」というものがどんなものか、わかっていない。死んだとわかっている友人に対し、淡々と「あしたには起きろよ」というセリフが、自分が殺した少女に「会って謝りたい」という加害者の女の子のセリフにリンクして、背筋が震えた。

この作品はもう26年も前の作品だけれど、今読んでもちっとも古臭く感じない。

彼女のマンガには明確な「答え」は用意されていない。それ故に、読者によって実に様々な読み方、捉え方が出来る。
この作品も、読む方によっては、私以外の解釈も多様にあるでしょう。

今でなく、26年前の社会の中でこの作品を読んだなら、私自身も今とは違った感想を抱いたのかもしれません。

「うしろあたま」は、この作品集の中では一番ストレートな話なんじゃないでしょうか。私はこれが一番好きです。

なんと言っても見せ方が上手い。天性の漫画家なのではないかと思うほど、言葉では多くを語らず、絵で魅せる。

一言で言ってしまうと、一人の勝気な女の子の恋愛話なのですが、私が最も苦手とする、歯の浮くような甘ったるいセリフは出てこない。

彼女は最初、自分に好意を持っている彼のことを拒絶するが、雨の日の相合傘から、彼の肩幅、彼の指先、走り去っていく彼の後姿に視線を追っていく内に、自分の中の恋愛感情に気付く。

その彼女の視線を表現したコマが、この上なく巧みで、私はその彼のことが愛しすぎて切なくなって、思わず涙が出てきた。そう思ったら、主人公の女の子も一緒に泣いていた。

その瞬間、「ああ、私は今、彼女になっている」と思った。

読者に何の障害もなく感情移入させる。類まれな表現力を持った作家でしょう。

男女問わずおすすめですが、特に「少女」を描いた作品が多いため、男性と女性では全く違った印象を持つのではないかと思います。

私は彼女の作品を読んで、改めて「女に生まれてよかった」と思いました。
SSの奇才・星新一の表題作ほか10編を、9人の漫画家さんたちがコミック化したもの。

出版社が秋田書店なせいか、描いている方々はあまりメジャーな漫画家さんではないですが、比較的有名なのは、「生活維持省」の志村貴子、「夜の事件」、「箱」の小田ひで次でしょうか。

このお二人はさすがと言うべきか、星新一ファンとしてこんなこと認めたくはないのだけれど、原作を超えてました。

特に「箱」がすごい。

コミックのラストを飾るにふさわしい出来栄えでした。

その漫画家さん独自のアレンジがなされていて、原作との微妙な違いを見比べながら読むのも楽しいです。

正直、「なんじゃこりゃ」と言いたくなるものもありますが、このお二方の作品を読むだけでも、買う価値はあると思います。
私はジャズはおろか、洋楽すらほとんど聴いたことないのに、何故このCDを手にとったかと言いますと、元シンバルズのボーカルの方のソロ作品だから。

シンバルズはポップバンドでしたが、ソロではジャズ・サックス・プレーヤーのお父様との共同プロデュースで、名曲をアレンジして歌い上げています。

「京都」のCMでおなじみの「my favorite things」、ティアーズ・フォー・フィアーズの「Everybody Wants To Rule The World」など、洋楽に全く無知な私でも、どこかで聴いたことのある全6曲。

お休みの日の晴れた朝、少しだけ早起きした午前によく似合う、穏やかで優しげなアルバムです。

アースウィンド&ファイアの「september」を、ボサノバ風にアレンジしているのですが、個人的に原曲よりも遥かに素敵だと思うのは私だけでしょうか。

原曲は個人的な諸事情により、あまり好きな曲ではなかったのですが、彼女の歌うこの曲は全くイメージが違っていて、一転して大好きな曲になってしまいました。

アレンジというのはこんなにも重要なものなのかと、改めて再認識。
ドラえもんの「ジャイアン」、「ジャイ子」の名前に関する説は、実に様々。なかでもよく目にするのが、「ジャイアン=ジャイ子のアンちゃん」説。

つまり、名前が出来たのはジャイ子が先だと。

だが私はそれに異を唱える。

コミックス21巻、「未来の町にただ一人」で、のび太は孫のセワシの住む未来へと行くのですが、その時出てきた、セワシの友人のジャイアンそっくりの男の子の名は「ジャンボ」。

ここから、「ジャイアン」の名も、この「ジャンボ」同様、「大きい」という意味の「ジャイアント」からとったものだと推測されるのです。

ジャイアンの妹だから、「ジャイ子」なのだと。

ちなみに、ジャイ子は本名ではないと、生前の藤子氏自身がおっしゃっていたという説があります。いずれ本編で語られるはずであったとのことですが、その前に惜しくもお亡くなりになってしまい、いまや真相は藪の中ですが・・・・・・。
コミックス16巻、恋をしたアライグマくんのお話にてシマリスくんのセリフ。

恋をしたアライグマくんは、相手の女の子にプレゼントを持っていこうとするが、結局やめてしまう。それを見ていたぼのぼのに「どうしてやめたのかな〜」と聞かれた時、シマリスくんは道端に落ちている小石を指差し、こう答えます。

「ぼのぼのちゃん。この石がアライグマの女の子とすると」

言いながらシマリスくんは、その石の周りをぐるりと円で囲む。

「恋をするというのは、こういう風に印をつけることなのでぃす。これ以外のことは恋とはなんの関係もないことなのでぃす。貝などあげてみたら、ほ〜らあんなに変ではねぃですか」

と、石に立てかけた貝を見て、彼はげらげら笑った。

何だか目からウロコが落ちた気がしました。そうか、そうなのか、シマリスくん。

その後、アライグマの女の子は引っ越してしまい、アライグマくんは失恋をします。好きな女の子がいなくなるってどんな気持ちなんだろうと考えるぼのぼの。

ふと近くにあった石を丸で囲み、そこからそっと石を取り出してみる。残された空白の円を見ながら、

"ああ、こんな気持ちなんだなあ"

とぼのぼのが呟くラストシーンが秀逸です。
てんとう虫コミックス26巻収録。

この作品がどうして文庫の「感動編」に収録されていないのか、非常に不思議。「ドラえもん」の中でも5本の指に入るくらいの、大好きな作品です。

ストーリーはのび太が裏山にいるシーンから始まります。辛いことがあった時、ここにくると慰められる、だからゴミが捨ててあると腹が立つと言って、山に捨てられたゴミを片付けるのび太。その姿に感心したドラえもんは、山と心を通い合わせることの出来る道具を出す。

のび太は山を愛し、また山も、ジャイアン達を追い払ったり、草のベッドを作ったり、木の実を生らすなどして、惜しみない愛情を彼に注ぐ。普段いじめられっ子で劣等性の彼は、裏山という居心地のいい安息の場所を手に入れて、友達とも遊ばず、家にも帰らずそこに閉じこもるようになり、社会から完全に逃避してしまう。

それに危機感を抱いたドラえもんは、山の心を呼び出して、なんとかのび太を返してくれるように土下座までして説得するが、のび太を愛する山は聞く耳を持たない。

いつもは何だかんだ言いつつものび太には甘いドラえもんも、今度ばかりは違った。「ここにいれば誰にもいじめられないし、食べ物も山が出してくれるんだよ!!」と言うのび太と、「食べて生きてるだけでいいのか!!こんなこと続けてたら、君はだめになっちゃう!!必ずだめになるぞ!!」と激しく口論する。

その様子を見て、動揺する山。

「山よ、こいつを追っ払え!」
のび太のセリフに山は応えた。だがしかし、落とし穴に落とされ、蜂に追いかけられて、追い払われたのはのび太自身。

それを見たドラえもんは、振り返って呟く。

「ありがとう・・・・・・。君、本当にのび太が好きだったんだね」

裏山とドラえもんと。二人がどれほどのび太を愛しているか、また、のび太がこれほどまでに二人に愛される人間であるということが窺い知れる名作です。
タイトルに惹かれて聴いてみた、コンタクトのファースト・フルアルバムですが、一曲目から見事に撃ち抜かれました。

都会のど真ん中で一人ぼっちで佇んで歌っているような、そんな切なさを感じさせるロックです。
でもそれは、決して「絶望」や「嘆き」ではなく、ボーカル清水氏の優しげな声と相まった、美しい夜明けの温もり。

この素晴らしい構成力でまだ新人だというのですから、これからが非常に楽しみなバンドです。

一番のお気に入りは「ハチミツの花」。
今年メジャーデビューした彼らの、インディーズ時代の2枚のアルバムからセレクトした、7曲入りのプレデビュー盤。

キーボードがかなりいい味出してるロックです。

歌詞もなかなかに独特で楽しめます。

個人的に「花屋の娘」と「ダンス2000」が傑作ですが、いずれの曲もはずれなし。彼らをご存知ない方が初めて聴いてみるには、最適のアルバムかも。

CD-EXTRAになっていて、メンバー紹介とスクリーンセーバーが入っています。

ただし、限定生産で5000枚しかありませんのでお早めに。
ぼのぼのといえば、シマリスくんが首を傾げながら言うこのセリフが、やはり最も有名でしょう。

ですが、最近のシマリスくんからは、このようなセリフは全く出てきません。相変わらずアライグマくんに蹴飛ばされながらも、随分たくましい性格になってきてしまいました。何か吹っ切れちゃったんでしょうか?

でも、私は現在のシマリスくんの方が好きだったりします。

眉間にしわの寄ってるシマリスくんが本格化してきたのは、アライグマくんが家出して、シマリスくんのお姉さん達に会いに行くところでしょうか。

「いぢめるの人」に両挟みにされて、やっぱりシマリスくんのどこかで抑圧されていたものが目覚めてしまったのかも。

誰かにこのセリフを言われたら、「いじめないよぉ〜」と返してあげましょう。
いがらしみきお氏の、ラッコの子ども「ぼのぼの」が主人公の4コママンガ。

4コマと言っても、ストーリーは繋がっていて、お話中に4コマ(または8コマ)に一回、オチがあるというのがすごい。

舞台は「ぼのぼの」が住む森。シマリス、アライグマ、スナドリネコ、ヒグマ、クズリ、フェネギーなどなど、森のいろいろな動物達のおかしくて楽しい日々を描いています。

基本はギャグですが、時に哲学を思わせる名言を生み出す故に、子どもから大人まで、幅広く人気を集めているマンガです。

現在はコミックス24巻まで発売。アニメ化、映画化もされているのに、何故か知名度はそう高くないのが不思議です。

可愛らしい動物達が出てくるのに、ただの「ほのぼの」とはちょっと違う、「ぼのぼの」。彼らの生み出した数々の名言を、私が個人的にチョイスして、名言集を作ってみようと思います。
言わずと知れた、藤子・F・不二雄氏の大人気コミック。てんとう虫コミックスは45巻まで発売。誰しも一度は読んだことがあるのではないでしょうか。

私はあえて、子どもではなく大人にこそ薦めたいマンガです。

私は「ドラえもん」が文庫化された時に、もう一度読んでみようかと手に取ったのですが、子どもの時に味わったものとは別の、大人になったからこそわかる感動というものに大きな衝撃を受けました。それ以来、すっかり氏の虜になって、作品を読み漁っております。

どうもまだ、「ドラえもん」は子どもの読み物だと思ってらっしゃる方が多い。好きなマンガはと尋ねられ、「ドラえもん」と答えると、大概鼻で笑われます。読んでくだされば、すぐにわかると思うのですが。

現に、現在発売になっている雑誌、「ぼく、ドラえもん」の主な購買層は"大人"です。スーツを着たサラリーマンのおじさん、お兄さん達が、お昼の休憩時間中、書店で「大長編ドラえもん」なんかをじっと立ち読みしてる姿を見ると、本当に嬉しくて笑顔がこぼれてしまいます。

普段大人として一生懸命働き続けている彼らも、「ドラえもん」には夢中になっちゃうんだなあ、と。

ここでは、大人に読んでほしい「ドラえもん」の名作を、私が勝手にセレクトしてご紹介していきたいと思います。

これを読んで、「ドラえもん」を再び手に取る方々が増えることを祈って。